肺がん(肺癌)遺伝子治療のご案内
東京慈恵会医科大学
遺伝子治療受付終了
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はじめに 遺伝子治療の基礎知識
遺伝子治療とは |
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日本において肺がん(肺癌)の患者さんに遺伝子治療を実施することができるようになりました。本学においても厚生省と文部省の認可を得ましたので、治療実施に向けた計画を進めております。この治療方法は海外ではすでに行われており、今のところ特に重大な副作用は認められておりません。しかしまだあくまでも研究段階の治療法であります。また肺がん(肺癌)の患者さんのすべてにこの治療が行えるわけではありません。そこでこのご案内を通して具体的な治療法やどのような患者さんが治療の適応となるのか、実際に治療をどのようにするかということの概略を説明させていただきます。
この治療は、遺伝子治療単独あるいは抗がん(癌)剤を併用した場合の「人での安全性、治療効果および薬物の体内分布を調べる」ことを目的とした臨床研究です。
この治療の対象となる方は、非小細胞肺がん(肺癌)と診断された方のうち、がん(癌)をすべて取りきるのが難しいため手術を断念せざるを得ず、さらに抗がん(癌)剤(化学療法)や放射線照射の効果も十分でなかった患者さん、あるいは手術を受けられたのちに再発した患者さんなどです。これらの患者さんで、p53遺伝子に異常のある方のみが治療の対象となります。
従いまして遺伝子治療を希望された場合には、治療に先立って、がん(癌)組織のp53遺伝子に異常があるかどうかを調べさせていただきます。この検査の結果、がん(癌)細胞中のp53遺伝子に異常を認めた患者さんが治療の対象となり、逆に異常を認めなかった場合には治療の対象とはなりません。この点についてはあらかじめご了承ください。
遺伝子治療は薬(正常なp53遺伝子)をがん(癌)組織に直接注入します。投与方法としては2通りあります。一つは気管支鏡という内視鏡を使う方法で気管支が閉塞している場合に主に行います。もう一つの方法はCTというレントゲンでがん(癌)の位置を確認しながら体表から針を刺してがん(癌)組織に直接薬剤を注入する方法です。どちらの方法で行うかはがん(癌)の発生した部位などにより決めさせていただきます。また病状によっては全身麻酔で胸腔鏡という内視鏡を使って行うこともあります。
また遺伝子治療に抗がん(癌)剤を併用させていただくこともあります。抗がん(癌)剤を併用するかどうかは臨床研究の進行状況により決めさせていただきます。
治療効果が得られますと、がん(癌)が小さくなります。たとえばがん(癌)により気管支が閉塞し、呼吸困難を生じることがありますが、治療によりがん(癌)が小さくなると呼吸が楽になります。またがん(癌)の進行による痛みが和らぐこともあります。このように治療により病状が改善することが考えられます。
海外ではすでに非小細胞肺がん(肺癌)の患者さんにこの治療が行われていますが、一番多い副作用は発熱でした。しかし多くの場合は軽度の発熱でした。そのほか注射部位の痛みが報告されています。
また併用した抗がん(癌)剤の副作用としては、はきけなどが報告されています。 |
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最近のめざましい遺伝子工学の進歩によって,多くの病気が遺伝子レベルの異常によって引き起こされていることがわかってきました.病気の原因となっている『異常な遺伝子』を同定し,代わりに人工的に作った『正常な遺伝子』を外部から細胞内に補充して細胞本来の機能を回復させることによって病気の治療を行うというのが遺伝子治療の考え方です.
世界で初めてヒトに対する遺伝子治療が行われたのは1990年のことです.対象となったのは,ADA欠損症という病気の4歳の女児でした.これは生まれながらにADAとういう大切な酵素を産生する遺伝子に異常があるために正常なADAが作られず,結果として重症の免疫不全を生じる病気です.米国国立衛生研究所の医師団はこの患者に正常なADA産生遺伝子を投与して効果をあげたのです.
がん(癌)と遺伝子との関係について簡単に説明します。がん(癌)の発生や進行にはさまざまな遺伝子が関わっています。これらの遺伝子はその働きから大きくがん(癌)遺伝子とがん(癌)抑制遺伝子の2種類に分けられます。これらの遺伝子に異常が起こるとがん(癌)が発生したり増殖したりします。がん(癌)を自動車に例えると、がん(癌)遺伝子は自動車のアクセル、がん(癌)抑制遺伝子は自動車のブレーキに相当します。すなわちがん(癌)遺伝子の異常はアクセルが踏み込まれ自動車が加速した状態、がん(癌)抑制遺伝子の異常はブレーキが壊れて自動車が止まらなくなった状態と考えられます。このようにして自動車が暴走するようにがん(癌)細胞は増殖していきます。
がん(癌)に対する遺伝子治療では,これら遺伝子の異常を同定し,『がん(癌)原遺伝子』に異常があればこれを不活化する遺伝子を投与するか,『がん(癌)抑制遺伝子』が不活化していれば『正常ながん(癌)抑制遺伝子』を投与する,といった方法が基本となっています.また,がん(癌)細胞に対する免疫能を強化する目的でがん(癌)患者さん自身のリンパ球にある種の遺伝子を組み入れて強力なリンパ球に変化させてから再び体内に戻してがん(癌)を攻撃させる方法などもあります。
このように,現在では色々な遺伝子を用いた様々なアプローチによるがん(癌)治療が考案されており,すでに全世界で数千人の患者さんが実際に治療を受けているのです。
がん(癌)抑制遺伝子の一つにp53という遺伝子があります。非小細胞肺がん(肺癌)の患者さんにおいては約半数の方が、がん(癌)組織中のp53に異常が認められます。今回日本で行えるようになった非小細胞肺がん(肺癌)の患者さんに対する遺伝子治療は、がん(癌)組織中に正常のp53遺伝子を投与するものです。これによりがん(癌)の増殖が抑制されたりあるいは縮小し、症状が改善されることが期待されます。
肺がん(肺癌)には主に腺がん(癌)、扁平上皮がん(癌)、大細胞がん(癌)、小細胞がん(癌)の4種類があります。治療方法は小細胞がん(癌)とそれ以外の肺がん(肺癌)では大きく異なるため、小細胞がん(癌)以外の肺がん(肺癌)を非小細胞肺がん(肺癌)と総称します。非小細胞肺がん(肺癌)は、早期のものでは手術が最善の治療法ですが、不幸にもがん(癌)が進行してしまった場合には手術で病巣を切除することは困難です。また抗がん(癌)剤などの治療も効きにくい種類のがん(癌)です。このがん(癌)に対して新しい治療法として遺伝子治療が試みられるようになりました。 |
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