第55回外科グランドラウンド開催さる

慈大新聞用原稿より


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呼吸器外科グランドラウンド
【テーマ】肺癌のスクリーニング

日時:12月17日(火曜日) 午前7:30〜8:30
場所:西講堂
司会 秋葉 直志

1.肺癌診断におけるPET検査の有用性
                    放射線科  森   豊

2.検診は肺癌診断に有用か
                    外科   尾高  真 

3.肺癌手術症例の発見動機
                    外科   佐藤 修二 


 第55回外科グランドラウンドは去る2002年12月17日(火曜日)西講堂で開催された。呼吸器外科担当で司会は外科秋葉直志、主題は「肺癌のスクリーニング」であった。

 最初の発表は「肺癌診断におけるPET検査の有用性」という題名で、放射線部森 豊講師からである。PET(positron emission tomography)検査は18F−フルオロデオキシグルコース(FDP)という半減期110分の核種を用いた検査で、ブドウ糖代謝が行われている部位を検索する。FDPは増殖する細胞に取り込まれるので、癌細胞にも取り込まれるが、サルコイドーシスや結核にも集積を認める。生化学情報を検索するので、X線CTやMRIとは根本的に異なっている。検査1件にかかる経費は14から15万円であるが、4月に保険適応が決まり、保険点数は7500点と設定された。10月時点で、国内64施設に稼動しているが、保険適応できる施設は10数施設である。適応は腫瘍、てんかん、心筋虚血がある。全身検索が可能で、山中湖クリニックによると、5526人中2.12%に腫瘍が発見された。旧来の検診では癌発見率が0.05―0.14%であり、非常によい成績をあげている。他の報告によると、感度は70―93%、特異度が86―99%で、X線CTの各々57―79%、54―91%より優れている。糖尿病や増殖能の低い腫瘍が問題点である。また、臨床的に部位の同定が難しく、CTとのfusionなどが検討されている。これに対し、センチネルリンパ節の評価、PET検査の空間分解能、臓器特異性、保険適応について討議された。

 次の発表は「検診は肺癌診断に有用か」という題名で、外科尾高 真助手からの発表であった。欧米では、胸部レントゲン(喀痰細胞診)検査の有効性が、Mayo Clinic(Mayo lung project)、Memorial Sloan-ketterling癌センター、Johns Hopkins大学のrandomized研究で検討された。切除率の向上や、早期発見症例の増加は認められたが、肺癌による死亡リスクは減少しないので、肺癌検診は有用でないと結論している。肺癌検診を受けていた症例群の肺癌死亡に関するオッズ比は、受けてなかった症例を対照群として1前後である。一方、国内では、症例対照研究が行われており、成毛班、藤村班(岡山県、新潟県、宮城県、群馬県)、神奈川県での報告がある。宮城県では、オッズ比が0.54―0.64であり、肺癌死亡リスクが46%減少した。神奈川県では、オッズ比が053であり、肺癌死亡率減少に寄与した。国内をまとめると、オッズ比が0.5―0.7であり、肺癌検診が有効と結論されている。これに対し、研究デザインの問題点、国民線量の問題、検診の具体的方法が討議された。

 最後に「肺癌手術症例の発見動機」という題名で外科佐藤修二講師の発表があった。東京慈恵医大外科での肺癌手術例の検討である。肺癌発見の機会として、70%の症例が検診発見群(検診、健康診断、他疾患で偶然撮影された胸部X線)である。その他の有症状群では、咳嗽発見が8%、胸痛や血痰がおのおの6%、その他が10%であった。前者の検診発見群の内訳は、TA期48%、TB期が18%でT期が66%を占める。後者の有症状群では、TA期21%、TB期が17%でT期が38%であり、T期症例は少ない。前者と後者の5年生存率を比較すると、70%と50%で、検診発見群のほうが予後良好な傾向がある。これに対し、検診と自覚症状例の関係、禁煙の問題が討議された。

 今回は、最近の話題PET検査の詳細、肺癌検診の有効性、肺癌の早期発見と検診についての発表があり、肺癌のスクリーニングの理解と整理ができた有意義な会であった。(記 秋葉直志)