2004年7月最新版(2003年9月29日更新)
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病期情報
胸腺腫の組織型分類は、生物学的に良性の胸腺腫と悪性胸腺腫を鑑別するには不十分である。浸潤の程度または腫瘍の病期が一般的に、全生存のより重要な指標と考えられる。 [1] [2] [3]
正岡の胸腺腫の病期分類体系
| 病期 |
記述 |
| I |
肉眼的に、完全に被包されている。顕微鏡的に、被膜への浸潤を認めない |
| II |
周囲の脂肪組織または縦隔胸膜への肉眼的浸潤;被膜への顕微鏡的浸潤 |
| III |
隣接臓器への肉眼的浸潤(心膜、肺、大血管) |
| IVa |
胸膜播種または心膜播種 |
| IVb |
リンパ行性または血行性転移 |
本要約では治療について論じるために、これらの病期を非浸潤性または浸潤性に分類している。
非浸潤性
非浸潤性胸腺腫(I期)の場合、腫瘍は胸腺内に限局し、他の組織に拡がっていない。すべての腫瘍細胞が、腫瘍を取り囲む繊維性被膜の中に存在する。
浸潤性
局所浸潤性(II期)胸腺腫の場合、腫瘍は被膜を破り、脂肪または胸膜へ浸潤している。広範浸潤型(III期およびIVa期)の胸腺腫では、腫瘍が胸腺から連続的に胸部の他臓器へ浸潤している。腹部臓器への拡がりまたは血行性転移(IVb期)を発見時に認めることはまれである。
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治療選択概観
たいていの胸腺腫は、外科的手術時に診断され、病期分類がなされる。外科的切除は、手術に耐えることができ、胸腺腫が疑われる縦隔腫瘤のある患者に望ましい治療法である。I期、II期のほとんどすべての患者、およびIII期の27〜44%の患者には、全腫瘍の完全切除を行う胸線全摘術が可能である。術後放射線治療は通常、II期およびIII期の患者で行われる。IVa期の患者の腫瘍を完全に切除できることはまれであり、通常、化学療法を併用するまたは併用しない、減量手術、および術後放射線治療を行う。
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非浸潤胸腺腫および胸腺癌
標準治療選択肢:
- 外科的切除:被膜に覆われた非浸潤性胸腺腫が完全切除できれば、局所再発のリスクは2%未満であり、通常は治癒する。 [1] 重症筋無力症の患者の場合、手術の計画において呼吸管理に細心の注意を払えば、手術死亡率を最小限に抑えることができる。
- 放射線治療は、被膜で覆われている胸腺腫が完全切除された場合には適応とならない。しかしながら、非浸潤性胸腺腫が不完全切除に終ったり、手術危険度が高い患者では、放射線治療を考えるべきである。 [1]
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浸潤胸腺腫および胸腺癌
標準治療選択肢:
手術可能な場合:
- 可能であれば一括(en bloc)切除。重症筋無力症の患者の場合、手術の計画において呼吸管理に細心の注意を払えば、手術死亡率を最小限に抑えることができる。
- 外科的切除の後、特にIII期およびIVa期の患者には、外科的に完全切除されたかどうかにかかわらず、一般的に放射線治療が推奨される。さかのぼり臨床研究(retrospective clinical studies) は、術後放射線療法の追加により、局所制御および生存が改善することを明らかにしている。 [1] [2] [3] [証拠水準:3iiiDiii]
手術不可能な場合(大静脈閉塞、胸膜浸潤、心膜播種などを伴うIII期、IV期):
- 放射線治療:生検または試験切除の後に肉眼的な残存腫瘍を認める患者では、放射線治療による局所制御は症例の60〜90%に達すると報告されている。放射線障害のリスクが増大するため、60グレイ(Gy)を超える線量は避けるべきである。切除不能なIII期の患者の全5年生存率は、約50%であると報告されている。 [4] [5] [6] [証拠水準:3iiiDiii]腫瘍の減量手術を受けた患者の予後が、生検のみを受けた患者よりも良好かどうかは明らかではない。 [4] [6]
臨床評価段階にある治療選択肢:
- 化学療法:十分な数の患者を対象に化学療法の役割を評価した第II相臨床試験は、ごくわずかしかない。多剤併用化学療法により完全奏効(CR:complete remission) または部分奏効(PR:partial remission)が得られることが報告されている。完全奏効例のいくつかは、その後の手術で病理学的に確認されている。IV期または放射線治療後に局所進行性の再発腫瘍を認める一連の患者30人において、PAC処方計画(regimen)(シスプラチンcisplatin、ドキソルビシンdoxorubicin、シクロホスファミドcyclophosphamide)により、完全奏効(CR:complete response)3例を含む50%の奏効率が得られた。反応期間中央値は12か月、5年生存率は 32%であった。
[7] [[証拠水準:3iiiDiii]別の一連の患者さんでは、ADOC処方計画(regimen)((ドキソルビシンdoxorubicin、シスプラチンcisplatin、ビンクリスチンvincristine、シクロホスファミドcyclophosphamide)で、患者の43%における完全奏効(CR:complete response)を含む92%(患者さん37人中34人)の奏効率が得られた。 [8] シスプラチンcisplatinとエトポシドetoposideとの併用化学療法に関する研究では、治療を行った患者さん16人中9人に奏効を認め、奏効期間中央値は3.4年、生存期間中央値は4.3年であった。 [9] さらにまた別の研究では、エトポシドetoposide、イホスファミド ifosfamide、およびシスプラチンcisplatinを3週間おきに4周期(cycle)投与された浸潤性胸腺腫または胸腺癌患者さん28人中9人で部分奏効(PR:partial response)が得られた。 [10] 奏効期間中央値は11.9か月(範囲、<1〜26か月)、全生存期間中央値は31.6か月であった。1年および2年生存率は、それぞれ89%と70%であった。 [10] [証拠水準:3iiiDiii]その他の多剤併用化学療法処方計画(regimen)は未だ評価中である。
多剤併用化学療法法処方計画(regimen)の方が単剤よりも効果的であるかどうかは未だ明らかでない。前向き比較試験(prospective comparison) は実施されていない。単独薬剤でのドキソルビシンdoxorubicin、マイタンシンmaytansine、シスプラチンcisplatin、イホスファミド ifosfamide、コルチコステロイドcorticosteroidについては、一時的な部分奏効(PR:partial response)が報告されている。しかしながら、コルチコステロイドcorticosteroidや多くの化学療法剤はリンパ球毒性であるということを忘れてはならない。多くのリンパ球様細胞浸潤を伴った胸腺腫瘍の縮小は、悪性の上皮性構成部分よりもむしろ、腫瘍の非悪性構成部分の縮小を反映している場合がある。
シスプラチンcisplatin単独またはプレドニゾンprednisoneとの併用による治療を行った患者さん17人のさかのぼり分析 (retrospective analysis) では、全相効率が64%であった。 [11]しかしながら、第II相研究においてシスプラチンcisplatin単独(50mg/m2、21日毎)では、部分相効率(partial
response rate)はわずか10%(患者さん20人中2人)であった。
[12] 別の前向き研究(prospective study)において、イホスファミドifosfamide単独薬剤での治療は進行胸腺腫患者さん13人中、5人の完全奏効(CR:complete response)および1人の部分奏効(partial response)と関連していた。
[13]
- 手術前化学療法:臨床的に進行した患者さんを対象にして、放射線治療を併用するまたは併用しない手術前化学療法の研究がいくつか報告されている。 [14] [15] 一連のIII期またはIVa期の患者さん16人の研究では、最初にADOC多剤併用化学療法が行われた。患者さん全員が化学療法に臨床的に奏効した。11人の患者さんは組織学的に残存腫瘍が認められたため、術後放射線療法を行った。この群全体の生存期間中央値は66か月であった。 [14] 12人の患者さんにおける別の同様の研究でも、100%の7年生存率および73%の7年無病生存率が報告された。
[16] [証拠水準:3iiiDiii]この疾患における通常の治療として術前化学療法を勧める前に、その効果を確認するための臨床研究をさらに実施する必要がある。
- 切除不能な腫瘍のための併用化学療法および放射線療法。切除不能な腫瘍を有する患者に対し、シスプラチンcisplatin、ドキソルビシンdoxorubicin、シクロホスファミドcyclophosphamideの投与後に胸部放射線療法を行った多施設研究は、52%の5年生存率を報告した。 [17] [証拠水準:3iiiDiii]
- その他の臨床試験。現在実施中の臨床試験に関する情報は、米国国立癌研究所(NCI)ウェッブサイト(ホームページ)から入手することができる。
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再発胸腺腫および胸腺癌
標準治療選択肢(有効性の高い順):
- 外科切除を繰り返す、特に局所的な再発、あるときは胸膜や心膜播種に対して行う。術後放射線療法は、不完全切除に終わった患者に使用されており、再発胸腺腫を完全切除した選択された患者さんのにも行われている。 [1]
- 放射線療法(以前の治療に基づいて、可能であれば)。
- 放射線療法に奏効しない切除不能な腫瘍に対するコルチコステロイドcorticosteroid。
臨床評価中にある治療選択肢:
-
化学療法:化学療法の役割の評価した第II相臨床研究はごくわずかしかない。これらの癌はまれであるため、すべての一連の患者さんは比較的少数で、弱い証拠を示す。しかしながら、多剤併用化学療法により完全(complete remission)および部分奏効(partial remission)が得られることが報告されている.完全奏効例のいくつかは、その後の手術で病理学的に確認されている。IV期または放射線治療後に局所進行性の再発腫瘍を認める一連の患者さん30人において、PAC処方計画(regimen)(シスプラチンcisplatin、ドキソルビシンdoxorubicin、シクロホスファミドcyclophosphamide)により、完全奏効(CR:complete response)3例を含む50%の相効率が得られた。反応期間中央値は12か月、5年生存率は32%であった。 [2] [証拠水準:3iiiDiii]別の一連の患者さんでは、ADOC処方計画(regimen)((ドキソルビシンdoxorubicin、シスプラチンcisplatin、ビンクリスチンvincristine、シクロホスファミドcyclophosphamide)で、患者の43%における完全奏効(CR:complete response)を含む92%(患者さん37人中34人)の奏効率が得られた。
[3] シスプラチンcisplatinとエトポシドetoposideとの併用化学療法に関するあるひとつの研究では、治療を行った患者さん16人中9人に奏効を認め、奏効期間中央値は3.4年、生存期間中央値は4.3年であった。 [4] エトポシドetoposide、イホスファミド ifosfamide、およびシスプラチンcisplatinを3週間おきに4周期(cycle)投与された浸潤性胸腺腫または胸腺癌患者さん28人中9人で部分奏効(PR:partial response)が得られた。 [5] 奏効期間中央値は11.9か月(範囲、<1〜26か月)、全生存期間中央値は31.6か月であった。1年および2年生存率は、それぞれ89%と70%であった。 [5] [証拠水準:3iiiDiii]
多剤併用化学療法レジメンの方が単剤よりも効果的であるかどうかは未だ明らかでないが、無作為割付した比較試験(randomized comparison)は実施されていない。シスプラチンcisplatin単剤(50mg/m2、21日毎)の第II相研究において部分奏効がわずか10%のであった。
[6] しかしながら、プレドニゾンprednisoneを併用するまたは併用しない、シスプラチンによる治療を10年間以上にわたって受けた患者さん17人のさかのぼり分析(retrospective analysis) では、全奏効率が64%であった。 [7] イホスファミドifosfamide単剤の前向き研究(prospective comparison) において、進行胸腺腫患者さん13人中に5人の完全奏効(CR:complete response)および1人の部分奏効(PR:partial response )が観察された。 [8] コルチコステロイドcorticosteroidに対しては、一時的な部分奏功(PR:partial response) もまた指摘されている。しかしながら、コルチコステロイドcorticosteroidおよび多くの化学療法剤はリンパ球毒性であるということを忘れてはならない。多くのリンパ球様細胞浸潤を伴った胸腺腫瘍の縮小は、悪性の上皮性構成部分よりもむしろ、腫瘍の非悪性構成部分の縮小を反映している場合がある。
- その他の臨床試験。現在実施中の臨床試験に関する情報は、米国国立癌研究所(NCI)ウェッブサイト(ホームページ)から入手することができる。
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2004年7月最新版(2003年9月29日更新) 翻訳:秋葉 直志
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