2004年7月最新版(2003年9月29日更新)
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一般情報
胸腺腫は胸腺の上皮性腫瘍であり、非腫瘍性のリンパ球の強い浸潤を認めたり認めなかったりする。胸腺腫という用語は、上皮成分に明らかな異型を示さない新生物を記述するために通常使用されている。胸腺に特異的ではない、明確な細胞異型や組織学的特徴を呈する胸腺の上皮性腫瘍は、胸腺癌として知られている(C型胸腺腫としても知られている)。 [1]
浸潤性胸腺腫と胸腺癌は比較的まれな腫瘍であり、合わせてすべての悪性腫瘍の約0.2〜1.5%を占める。 胸腺癌はまれであり、すべての胸腺新生物の0.06%しか占めないことが報告されている。 [3]
一般的に胸腺腫は、転移よりもむしろ局所再発の傾向をもつおとなしい腫瘍である。 しかし、胸腺癌は通常浸潤性であり、再発や死亡の危険が高い。 [4] [5]
胸腺腫または胸腺癌患者の大部分は年齢が40〜60歳である。 [6] これらの腫瘍の病因は明らかになっていない。症例の約半分は、胸腺腫と胸腺癌は胸部X線撮影で偶然に発見される。 [6] 90%が前縦隔に発生する。
[7]
胸腺腫や胸腺癌の患者さんの約30%は診断時に症状がない。 [6] 腫瘍で起こる症状には、咳、胸痛、上気道のうっ血などがある。胸腺腫と関連した腫瘍随伴性自己免疫症候群には、特に重症筋無力症、多発性筋炎、エリテマトーデス、慢性関節リウマチ、甲状腺炎、およびシェーグレン症候群(Sjogren’s syndrome)がある。 [6] [8] [9] 自己免疫赤芽球癆および低ガンマグロブリン血症はそれぞれ、胸腺腫患者の約5%に起こります。 [7] 胸腺腫に関連した自己免疫疾患は、循環T細胞の部分集合subsetにおける変化もある。 [10] [11] 主なT細胞の異常は、腫瘍内胸腺形成末期の不活性(naive)CD4+T細胞におけるCD45RA+表現型の獲得と、それに続くこれらの活性化CD4+T細胞の循環内への搬出と関連しているようである。 [12] T細胞の欠陥に加えて、B細胞リンパ球減少が胸腺腫関連免疫不全において観察されており、低ガンマグロブリン血症(グッド症候群:Good syndrome)および日和見感染を伴う。 [13] [14] [15] 胸腺腫とは対照的に、胸腺癌と自己免疫疾患との関連はまれである。 [8] [16]
ある大規模レトロスペクティブ研究において、胸腺腫症例(胸腺癌は除外)の約47%が重症筋無力症と関連していることが明らかにされた。 [17] 胸腺腫の腫瘍学的予後は、重症筋無力症を認める患者の方が、重症筋無力症を認めない患者よりも良好であることが報告されているが [7] 、胸腺摘出による治療は胸腺腫関連重症筋無力症の経過を明らかに改善しないことがある。 [18] [19]
胸腺腫および胸腺癌は、神経内分泌腫瘍、胚細胞腫瘍、リンパ腫、間質性腫瘍、腫瘍様病変(真性胸腺過形成など)、胸腺嚢胞、転移性腫瘍、肺癌など、多くの非上皮性胸腺新生物とは鑑別すべきである。 [1] [20] これらの腫瘍に対する標準的な第一の治療法は、可能であれば浸潤性腫瘍の一括切除を伴う外科手術である。 [4] [6] [7] [21] 腫瘍の病期によって集学的治療には、手術療法を伴うまたは伴わない放射線療法および化学療法の使用がある。 [6] [22]
胸腺腫は二次性悪性腫瘍の危険増加と関連しており、これは胸腺摘出、放射線療法、または重症筋無力症の病歴とは無関係のようである。 [19] [23] [24] この二次性悪性腫瘍のリスク増加および胸腺腫が長期の間隔後に再発しうるという事実のため、監視は終生行うべきであると推奨されている。 [19] インターフェロンアルファ(interferon-alpha)およびインターロイキン-2(interleukin-2)抗体の測定は、胸腺腫再発患者の同定に役立つことが報告されている。 [25]
胸腺腫の分類は議論の源になっているが、より首尾一貫した分類のための一般的なガイドラインがいくつかでてきている。胸腺腫瘍に対する世界保健機関(WHO:World
Health Organization)の病理学的分類は、腫瘍浸潤性の程度と腫瘍の組織の,独立した評価の重要性を強調している。 [1]
一部の胸腺腫の組織型は浸潤性で臨床的に侵攻性の傾向がより強いが、治療成績および再発の可能性は、腫瘍細胞の浸潤性/転移性の特性とより密接に相関しているようである。 [1] [17] そのため、組織学的規準では比較的良性に思われる一部の胸腺腫が非常に侵攻性に行動することがある。胸腺腫の臨床的行動を予測するには、腫瘍浸潤性(病期分類規準を使用)と腫瘍組織の両方の独立した評価を組み合わせるべきである。
参考文献
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細胞分類
以下の胸腺腫および胸腺癌の細胞分類は、主として1999年に出版された世界保健機関(WHO:World Health Organization)の単行本で提示された分類方法に基づく。
[1] 胸腺腫の組織学的分類は、独立した予後的意義を持つことがあるが、病期分類は胸腺腫患者における生存期間の最も重要な決定因子である。 [2] [3] 対照的に、胸腺癌40例のあるさかのぼり研究(retrospective
study)は、腫瘍の組織が胸腺癌患者における生存期間の指標として病期よりも重要であることを示唆している。 [4] 現在までのところ、胸腺腫または胸腺癌の独自の組織型と関連している独自の染色体異常は存在しない。 [5] [6] [7] [8]
胸腺腫
胸腺腫は、上皮構成部分が明らかな異型を示さない胸腺の上皮性腫瘍であり、正常胸腺に特異的な組織学的特徴を保持している。 [1] 未熟な非腫瘍性のリンパ球が、胸腺腫の組織型に応じてさまざまな数で存在する。胸腺腫の組織型は以下のとおりである:
-
A型胸腺腫
A型胸腺腫(紡錘細胞胸腺腫および髄質胸腺腫としても知られる)は、すべての胸腺腫の約4〜7%を占める。 [2] [3] 症例の約17%は、重症筋無力症と関連している。
[2] 形態学的には、腫瘍は、腫瘍性胸腺上皮細胞で構成されており,細胞は紡錘/楕円形で、核異型を認めず、存在するとしてもごくわずかな非腫瘍性のリンパ球を伴う.[1] この腫瘍の外観は、間葉系新生物の外観と混同されることがあるが、免疫組織化学的および超微細構造上の特徴は明らかに上皮性新生物の特徴である。ほとんどのA型胸腺腫は、被包性である(病期情報を参照のこと)。しかしながら、被膜に浸潤するものもあり、まれに肺にまで広がることもある。染色体異常が存在する場合は、侵攻性の臨床経過と相関しうる。 [8] この腫瘍型の予後はきわめて良好であり、さかのぼり研究(retrospective studies)における長期生存率(15年以上)は100%近いことが報告されている。 [2] [3]
-
AB型胸腺腫
AB型胸腺腫(混合胸腺腫としても知られる)は、すべての胸腺腫の約28〜34%を占める。 [2] [3] 症例の約16%は、重症筋無力症と関連している。
[2] 形態学的には、AB型胸腺腫は、A型胸腺腫の特徴を有する病巣が非腫瘍性のリンパ球を多く含む病巣と混ざっている胸腺の腫瘍である。 [1] 異なる病巣の分離部分は、鮮明であることもあれば不明瞭なこともあり、2つの構成要素の相対的な量には幅広い範囲がある。この腫瘍型の予後は良好であり、2件の大規模さかのぼり研究(retrospective studies)における長期生存率(15年以上)は約90%かそれ以上であることが最近報告されている。 [2] [3]
-
B1型胸腺腫
B1型胸腺腫(リンパ球優位型胸腺腫,リンパ球性胸腺腫、皮質優位性胸腺腫、類臓器性胸腺腫としても知られる)は、引用された研究から、すべての胸腺腫の約9〜20%を占める。 [2] [3] 症例の約57%は、重症筋無力症と関連している。 [2] 形態学的には、この腫瘍は正常機能胸腺に類似するが、これはこの腫瘍が、胸腺の髄質に類似する領域を伴った,正常な胸腺の皮質との区別がほとんど不可能な外観を有する細胞を非常に多く含むためである。 [1] この腫瘍型と正常に活動する胸腺は極めて類似しているため、この2つの区別が顕微鏡検査で不可能なことがある。この腫瘍型の予後は良好であり、約90%の長期生存率(20年以上)である。 [2] [3]
-
B2型胸腺腫
B2型胸腺腫(皮質胸腺腫および多角細胞胸腺腫としても知られる)は、引用された研究から、すべての胸腺腫の約20〜36%を占める。 [2] [3] 症例の約71%は、重症筋無力症と関連している。 [2] 形態学的には、この腫瘍型の腫瘍上皮成分は、非腫瘍性のリンパ球の大きな集団中に,小胞性細胞核で明瞭な核小体をもつ,散在性の円形細胞として出現する [1] 血管周囲腔は一般的であり、時に非常に顕著である。柵状化した腫瘍細胞の血管周囲配列がみられることがある。この型の胸腺腫は、そのリンパ球の優勢においてB1型胸腺腫と類似しているが、髄質分化の病巣はより目立たないか、みられない。長期生存率は、A型、AB型、およびB1型胸腺腫よりも明らかに不良である。この胸腺腫型に対する20年生存率(腫瘍死からの解放によって定義される)は、約60%である。 [2]
-
B3型胸腺腫
B3型胸腺腫(上皮胸腺腫、異型胸腺腫、扁平上皮様胸腺腫、高分化胸腺癌としても知られる)は、すべての胸腺腫の約10〜14%を占める。症例の約46%は、重症筋無力症と関連している。 [2] 形態学的には、この腫瘍型は大部分が、円形か多角形であり、異型性を全く示さないか、わずかに示す上皮細胞で構成されている。 [1] 上皮細胞は、非腫瘍性のリンパ球のより少ない構成要素と混ざっており、腫瘍性上皮細胞の敷布(sheet)状の成長を来たしている。この胸腺腫型に対する20年生存率(腫瘍死からの解放によって定義される)は、約40%である。 [2]
胸腺癌
胸腺癌(C型胸腺腫としても知られる)は、もはや胸腺に特有ではなく、むしろ他の器官の癌において観察される,明確な細胞異型と一連の組織学的特徴を呈する,胸腺の上皮性腫瘍である。 [1] AおよびB型胸腺腫とは対照的に、胸腺癌には未熟リンパ球が欠如している。存在するリンパ球はすべて成熟しており、通常は形質細胞と混ざっている。胸腺癌は、既存の胸腺腫の悪性化から生じうるという仮説が立てられている。 [9] この仮説の出現は、同一腫瘍内における胸腺腫と胸腺癌の組み合わされた特徴を示す胸腺の上皮性病変の存在を説明できる。 [10]
胸腺癌は通常、診断時にすでに進行しており、胸腺腫と比較して高い再発率と不良な生存期間を示す。 [4] [11] 胸腺癌患者40人のあるさかのぼり研究(retrospective
study)では、5年および10年生命表法全生存率は、それぞれ38%と28%であった。 [4] 胸腺腫とは対照的に、胸腺癌と自己免疫疾患との関連はまれである。 [12]
胸腺癌の組織亜型には、以下のものがある:
-
扁平上皮(類表皮)胸腺癌
この型の胸腺癌は明確な細胞異型を示す。通常の染色した切片において、角化形態は細胞間橋および/または扁平真珠の形状で扁平上皮への分化の明確な証拠を同様に示すのに対して、非角化形態は角質化の明確な徴候を欠く。別の亜型である類基底細胞癌は、高い核-細胞質比および角化の欠如のために、周辺柵状化および全体的に好塩基性染色パターンを呈する腫瘍細胞の密集した小葉で構成されている。
-
リンパ上皮腫様胸腺癌
この型の胸腺癌は、気道のリンパ上皮性癌のものとの区別不可能な形態学的特徴を有する。胚細胞腫瘍、特に性上皮腫(セミノーマ:seminoma)との鑑別診断が困難なことがあるが治療には重要である。
-
肉腫様胸腺癌(癌肉腫)
これは、腫瘍の一部または全部が軟部組織肉腫の一種に類似する胸腺癌の1つの型である。
-
淡明細胞胸腺癌
これは、光学的に明るい細胞質を持つ細胞で,優勢にまたは排他的に構成される胸腺癌の1つの型である。
-
粘液性類表皮胸腺癌
この型の胸腺癌は、大または小唾液腺の粘表皮癌の外観と類似した外観を持つ。
-
乳頭状胸腺癌
この型の胸腺癌は、乳頭状に増殖する。この組織学は砂粒小体(psammoma body)形成を伴うことがあり、甲状腺乳頭状癌との酷似する。
-
未分化胸腺癌
これは、充実性で未分化に増殖するが、肉腫様(紡錘細胞または多形細胞性)の特徴を示さないまれな型の胸腺癌である。
-
複合型胸腺腫
上記の組織型の組合わされたものが、同一の腫瘍内で発生しうる。これらのケースでは、複合型胸腺腫という用語が使用され、続いて構成要素およびその相対的な量の列挙が続く。 [1]
参考文献
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病期情報
胸腺腫の組織型分類は、生物学的に良性の胸腺腫と悪性胸腺腫を鑑別するには不十分である。浸潤の程度または腫瘍の病期が一般的に、全生存のより重要な指標と考えられる。 [1] [2] [3]
胸腺腫の浸潤性評価には、組織型とは別に隣接への浸潤の存在および程度、播種の存在、およびリンパ節または遠隔転移を示す病期分類規準の使用が含まれる。標準化された病期分類はないが、1981年に正岡が提唱した下記に示す分類法が一般的に使われている。 [4]
正岡の胸腺腫の病期分類体系
| 病期 |
説明 |
| I |
肉眼的に、完全に被包されている。顕微鏡的に、被膜への浸潤を認めない |
| II |
周囲の脂肪組織または縦隔胸膜への肉眼的浸潤;被膜への顕微鏡的浸潤 |
| III |
隣接臓器への肉眼的浸潤(心膜、肺、大血管) |
| IVa |
胸膜播種または心膜播種 |
| IVb |
リンパ行性または血行性転移 |
本要約では治療について論じるために、これらの病期を非浸潤性または浸潤性に分類している。
非浸潤性
非浸潤性胸腺腫(I期)の場合、腫瘍は胸腺内に限局し、他の組織に拡がっていない。すべての腫瘍細胞が、腫瘍を取り囲む繊維性被膜の中に存在する。
浸潤性
局所浸潤性(II期)胸腺腫の場合、腫瘍は被膜を破り、脂肪または胸膜へ浸潤している。広範浸潤型(III期およびIVa期)の胸腺腫では、腫瘍が胸腺から連続的に胸部の他臓器へ浸潤している。腹部臓器への拡がりまたは血行性転移(IVb期)を発見時に認めることはまれである。
外科治療を受けた連続した85人の患者さんにこの病期分類を適用したところ、予後の決定に有用であることが確認され、I期の胸腺腫では96%の5年生存率、II期の胸腺腫では86%、III期の胸腺腫では69%、およびIV期の胸腺腫では50%であった。 [4] [5] 胸腺腫273例の大規模さかのぼり研究(retrospective
study) において、正岡の病期分類体系に従った20年生存率(腫瘍死からの解放によって定義される)は、I期の胸腺腫では89%、II期の胸腺腫では91%、III期の胸腺腫では49%、およびIV期の胸腺腫では0%と報告された。 [1]
正岡の病期分類体系が胸腺癌に対する転帰を精確に予測しないことを主張している研究者もいる。 [6] [7] 胸腺癌の43例を評価する1件のさかのぼり研究(retrospective
study) において、予後は腫瘍の腕頭動脈への浸潤にのみ依存することが明らかにされた。 [7]
胸腺腫の診断と病気分類を行う上で、特に非浸潤性腫瘍に対しては、コンピュータ断層撮影(CT:computed tomography )が有用であろう。CTは通常、腫瘍径、病変部位のほか、血管、心膜、および肺への浸潤を正確に予測する。しかしながら、浸潤または切除可能性を正確に予測することはできない。 [3] [8] CT上の腫瘍の外観は、世界保健機関(WHO:World Health
Organization) の組織型と関連していることがある。 [9] 胸腺の上皮性腫瘍に対する胸腺摘出を受けた患者53人を含むあるさかのぼり研究は、平滑な輪郭および丸い形がA型胸腺腫を最もよく示すのに対し、不規則な輪郭は胸腺癌を最もよく示すことを示唆している。石灰化は、B型胸腺腫を示唆する。しかしながら、この研究では、AB、B1、B2、B3型胸腺腫の鑑別にCTの価値が限られていることが明らかになった。 [10]
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治療選択概観
たいていの胸腺腫は、外科的手術時に診断され、病期分類がなされる。外科的切除は、手術に耐えることができ、胸腺腫が疑われる縦隔腫瘤のある患者に望ましい治療法である。I期、II期のほとんどすべての患者、およびIII期の27〜44%の患者には、全腫瘍の完全切除を行う胸線全摘術が可能である。術後放射線治療は通常、II期およびIII期の患者で行われる。IVa期の患者の腫瘍を完全に切除できることはまれであり、通常、化学療法を併用するまたは併用しない、減量手術、および術後放射線治療を行う。
最新の臨床試験
臨床試験に関する情報は、米国国立癌研究所(NCI)のウェッブサイト(ホームページ)から入手することができる。個々の患者の登録に必要な条件および適合性は、しばしば試験毎に異なる。臨床試験への登録を考慮している者は、かかりつけの医師および各試験の記述に記載されている研究の担当係と共にこれらの問題を注意深く検討すべきである。
胸腺腫/胸腺癌の公開治療試験を参照のこと。 臨床試験検索書へ。
PDQ(医師情報質問)には、各治療法について、「標準」または「臨床評価段階にある」と記載しているものがあるが、これは保険払い戻しを決定する材料にするものではない。
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非浸潤胸腺腫および胸腺癌
標準治療選択肢:
- 外科的切除:被膜に覆われた非浸潤性胸腺腫が完全切除できれば、局所再発のリスクは2%未満であり、通常は治癒する。 [1] 重症筋無力症の患者の場合、手術の計画において呼吸管理に細心の注意を払えば、手術死亡率を最小限に抑えることができる。
- 放射線治療は、被膜で覆われている胸腺腫が完全切除された場合には適応とならない。しかしながら、非浸潤性胸腺腫が不完全切除に終ったり、手術危険度が高い患者では、放射線治療を考えるべきである。 [1]
参考文献
- McKenna WG, Bonomi P, Barnes MM, et al.: Malignancies of the thymus. In: Roth
JA, Ruckdeschel JC, Weisenburger TH: Thoracic Oncology. Philadelphia, Pa: WB
Saunders Co, 1989, pp 466-477.
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浸潤胸腺腫および胸腺癌
注:この章の本文中にある引用番号の後ろに、証拠水準を付記しているものがある。治療戦略の報告結果に関する証拠の強さを読者が判断しやすくするために、PDQ編集委員会は、公式順位分類を採用している。(詳しい情報については、証拠レベルに関するPDQ要約を参照のこと)
標準治療選択肢:
手術可能な場合:
- 可能であれば一括(en bloc)切除。重症筋無力症の患者の場合、手術の計画において呼吸管理に細心の注意を払えば、手術死亡率を最小限に抑えることができる。
- 外科的切除の後、特にIII期およびIVa期の患者には、外科的に完全切除されたかどうかにかかわらず、一般的に放射線治療が推奨される。さかのぼり臨床研究(retrospective clinical studies) は、術後放射線療法の追加により、局所制御および生存が改善することを明らかにしている。 [1] [2] [3] [証拠水準:3iiiDiii]
手術不可能な場合(大静脈閉塞、胸膜浸潤、心膜播種などを伴うIII期、IV期):
- 放射線治療:生検または試験切除の後に肉眼的な残存腫瘍を認める患者では、放射線治療による局所制御は症例の60〜90%に達すると報告されている。放射線障害のリスクが増大するため、60グレイ(Gy)を超える線量は避けるべきである。切除不能なIII期の患者の全5年生存率は、約50%であると報告されている。 [4] [5] [6] [証拠水準:3iiiDiii]腫瘍の減量手術を受けた患者の予後が、生検のみを受けた患者よりも良好かどうかは明らかではない。 [4] [6]
臨床評価段階にある治療選択肢:
- 化学療法:十分な数の患者を対象に化学療法の役割を評価した第II相臨床試験は、ごくわずかしかない。多剤併用化学療法により完全奏効(CR:complete remission) または部分奏効(PR:partial remission)が得られることが報告されている。完全奏効例のいくつかは、その後の手術で病理学的に確認されている。IV期または放射線治療後に局所進行性の再発腫瘍を認める一連の患者30人において、PAC処方計画(regimen)(シスプラチンcisplatin、ドキソルビシンdoxorubicin、シクロホスファミドcyclophosphamide)により、完全奏効(CR:complete response)3例を含む50%の奏効率が得られた。反応期間中央値は12か月、5年生存率は 32%であった。
[7] [[証拠水準:3iiiDiii]別の一連の患者さんでは、ADOC処方計画(regimen)((ドキソルビシンdoxorubicin、シスプラチンcisplatin、ビンクリスチンvincristine、シクロホスファミドcyclophosphamide)で、患者の43%における完全奏効(CR:complete response)を含む92%(患者さん37人中34人)の奏効率が得られた。 [8] シスプラチンcisplatinとエトポシドetoposideとの併用化学療法に関する研究では、治療を行った患者さん16人中9人に奏効を認め、奏効期間中央値は3.4年、生存期間中央値は4.3年であった。 [9] さらにまた別の研究では、エトポシドetoposide、イホスファミド ifosfamide、およびシスプラチンcisplatinを3週間おきに4周期(cycle)投与された浸潤性胸腺腫または胸腺癌患者さん28人中9人で部分奏効(PR:partial response)が得られた。 [10] 奏効期間中央値は11.9か月(範囲、<1〜26か月)、全生存期間中央値は31.6か月であった。1年および2年生存率は、それぞれ89%と70%であった。 [10] [証拠水準:3iiiDiii]その他の多剤併用化学療法処方計画(regimen)は未だ評価中である。
多剤併用化学療法法処方計画(regimen)の方が単剤よりも効果的であるかどうかは未だ明らかでない。前向き比較試験(prospective comparison) は実施されていない。単独薬剤でのドキソルビシンdoxorubicin、マイタンシンmaytansine、シスプラチンcisplatin、イホスファミド ifosfamide、コルチコステロイドcorticosteroidについては、一時的な部分奏効(PR:partial response)が報告されている。しかしながら、コルチコステロイドcorticosteroidや多くの化学療法剤はリンパ球毒性であるということを忘れてはならない。多くのリンパ球様細胞浸潤を伴った胸腺腫瘍の縮小は、悪性の上皮性構成部分よりもむしろ、腫瘍の非悪性構成部分の縮小を反映している場合がある。
シスプラチンcisplatin単独またはプレドニゾンprednisoneとの併用による治療を行った患者さん17人のさかのぼり分析 (retrospective analysis) では、全相効率が64%であった。 [11]しかしながら、第II相研究においてシスプラチンcisplatin単独(50mg/m2、21日毎)では、部分相効率(partial
response rate)はわずか10%(患者さん20人中2人)であった。
[12] 別の前向き研究(prospective study)において、イホスファミドifosfamide単独薬剤での治療は進行胸腺腫患者さん13人中、5人の完全奏効(CR:complete response)および1人の部分奏効(partial response)と関連していた。
[13]
- 手術前化学療法:臨床的に進行した患者さんを対象にして、放射線治療を併用するまたは併用しない手術前化学療法の研究がいくつか報告されている。 [14] [15] 一連のIII期またはIVa期の患者さん16人の研究では、最初にADOC多剤併用化学療法が行われた。患者さん全員が化学療法に臨床的に奏効した。11人の患者さんは組織学的に残存腫瘍が認められたため、術後放射線療法を行った。この群全体の生存期間中央値は66か月であった。 [14] 12人の患者さんにおける別の同様の研究でも、100%の7年生存率および73%の7年無病生存率が報告された。
[16] [証拠水準:3iiiDiii]この疾患における通常の治療として術前化学療法を勧める前に、その効果を確認するための臨床研究をさらに実施する必要がある。
- 切除不能な腫瘍のための併用化学療法および放射線療法。切除不能な腫瘍を有する患者に対し、シスプラチンcisplatin、ドキソルビシンdoxorubicin、シクロホスファミドcyclophosphamideの投与後に胸部放射線療法を行った多施設研究は、52%の5年生存率を報告した。 [17] [証拠水準:3iiiDiii]
- その他の臨床試験。現在実施中の臨床試験に関する情報は、米国国立癌研究所(NCI)ウェッブサイト(ホームページ)から入手することができる。
参考文献
- Ariaratnam LS, Kalnicki S, Mincer F, et al.: The
management of malignant thymoma with radiation therapy. Int J Radiat Oncol Biol
Phys 5 (1): 77-80, 1979. [PUBMED Abstract]
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- Curran WJ Jr, Kornstein MJ, Brooks JJ, et al.:
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incomplete surgical resection. J Clin Oncol 6 (11): 1722-7, 1988. [PUBMED Abstract]
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results of an intergroup trial. The Eastern Cooperative Oncology Group,
Southwest Oncology Group, and Southeastern Cancer Study Group. J Clin Oncol 12
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Chemotherapy for invasive thymoma. A 13-year experience. Cancer 68 (1): 30-3,
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Cisplatin and etoposide combination chemotherapy for locally advanced or
metastatic thymoma. A phase II study of the European Organization for Research
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- Loehrer PJ Sr, Jiroutek M, Aisner S, et al.:
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advanced thymoma and thymic carcinoma: an intergroup trial. Cancer 91 (11):
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- Shin DM, Walsh GL, Komaki R, et al.: A
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- Loehrer PJ Sr, Chen M, Kim K, et al.: Cisplatin,
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limited-stage unresectable thymoma: an intergroup trial. J Clin Oncol 15 (9):
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再発胸腺腫および胸腺癌
注:この章の本文中にある引用番号の後ろに、証拠水準を付記しているものがある。治療戦略の報告結果に関する証拠の強さを読者が判断しやすくするために、PDQ編集委員会は、公式順位分類を採用している。(詳しい情報については、証拠レベルに関するPDQ要約を参照のこと)
標準治療選択肢(有効性の高い順):
- 外科切除を繰り返す、特に局所的な再発、あるときは胸膜や心膜播種に対して行う。術後放射線療法は、不完全切除に終わった患者に使用されており、再発胸腺腫を完全切除した選択された患者さんのにも行われている。 [1]
- 放射線療法(以前の治療に基づいて、可能であれば)。
- 放射線療法に奏効しない切除不能な腫瘍に対するコルチコステロイドcorticosteroid。
臨床評価中にある治療選択肢:
-
化学療法:化学療法の役割の評価した第II相臨床研究はごくわずかしかない。これらの癌はまれであるため、すべての一連の患者さんは比較的少数で、弱い証拠を示す。しかしながら、多剤併用化学療法により完全(complete remission)および部分奏効(partial remission)が得られることが報告されている.完全奏効例のいくつかは、その後の手術で病理学的に確認されている。IV期または放射線治療後に局所進行性の再発腫瘍を認める一連の患者さん30人において、PAC処方計画(regimen)(シスプラチンcisplatin、ドキソルビシンdoxorubicin、シクロホスファミドcyclophosphamide)により、完全奏効(CR:complete response)3例を含む50%の相効率が得られた。反応期間中央値は12か月、5年生存率は32%であった。 [2] [証拠水準:3iiiDiii]別の一連の患者さんでは、ADOC処方計画(regimen)((ドキソルビシンdoxorubicin、シスプラチンcisplatin、ビンクリスチンvincristine、シクロホスファミドcyclophosphamide)で、患者の43%における完全奏効(CR:complete response)を含む92%(患者さん37人中34人)の奏効率が得られた。
[3] シスプラチンcisplatinとエトポシドetoposideとの併用化学療法に関するあるひとつの研究では、治療を行った患者さん16人中9人に奏効を認め、奏効期間中央値は3.4年、生存期間中央値は4.3年であった。 [4] エトポシドetoposide、イホスファミド ifosfamide、およびシスプラチンcisplatinを3週間おきに4周期(cycle)投与された浸潤性胸腺腫または胸腺癌患者さん28人中9人で部分奏効(PR:partial response)が得られた。 [5] 奏効期間中央値は11.9か月(範囲、<1〜26か月)、全生存期間中央値は31.6か月であった。1年および2年生存率は、それぞれ89%と70%であった。 [5] [証拠水準:3iiiDiii]
多剤併用化学療法レジメンの方が単剤よりも効果的であるかどうかは未だ明らかでないが、無作為割付した比較試験(randomized comparison)は実施されていない。シスプラチンcisplatin単剤(50mg/m2、21日毎)の第II相研究において部分奏効がわずか10%のであった。
[6] しかしながら、プレドニゾンprednisoneを併用するまたは併用しない、シスプラチンによる治療を10年間以上にわたって受けた患者さん17人のさかのぼり分析(retrospective analysis) では、全奏効率が64%であった。 [7] イホスファミドifosfamide単剤の前向き研究(prospective comparison) において、進行胸腺腫患者さん13人中に5人の完全奏効(CR:complete response)および1人の部分奏効(PR:partial response )が観察された。 [8] コルチコステロイドcorticosteroidに対しては、一時的な部分奏功(PR:partial response) もまた指摘されている。しかしながら、コルチコステロイドcorticosteroidおよび多くの化学療法剤はリンパ球毒性であるということを忘れてはならない。多くのリンパ球様細胞浸潤を伴った胸腺腫瘍の縮小は、悪性の上皮性構成部分よりもむしろ、腫瘍の非悪性構成部分の縮小を反映している場合がある。
- その他の臨床試験。現在実施中の臨床試験に関する情報は、米国国立癌研究所(NCI)ウェッブサイト(ホームページ)から入手することができる。
参考文献
- Urgesi A, Monetti U, Rossi G, et al.: Aggressive
treatment of intrathoracic recurrences of thymoma. Radiother Oncol 24 (4):
221-5, 1992. [PUBMED Abstract]
- Loehrer PJ Sr, Kim K, Aisner SC, et al.: Cisplatin
plus doxorubicin plus cyclophosphamide in metastatic or recurrent thymoma: final
results of an intergroup trial. The Eastern Cooperative Oncology Group,
Southwest Oncology Group, and Southeastern Cancer Study Group. J Clin Oncol 12
(6): 1164-8, 1994. [PUBMED Abstract]
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Chemotherapy for invasive thymoma. A 13-year experience. Cancer 68 (1): 30-3,
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- Giaccone G, Ardizzoni A, Kirkpatrick A, et al.:
Cisplatin and etoposide combination chemotherapy for locally advanced or
metastatic thymoma. A phase II study of the European Organization for Research
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814-20, 1996. [PUBMED Abstract]
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advanced thymoma and thymic carcinoma: an intergroup trial. Cancer 91 (11):
2010-5, 2001. [PUBMED Abstract]
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- Park HS, Shin DM, Lee JS, et al.: Thymoma. A
retrospective study of 87 cases. Cancer 73 (10): 2491-8, 1994. [PUBMED Abstract]
- Harper PG, Highly M, Rankin E, et al.: Ifosfamide
monotherapy demonstrates high activity in malignant thymoma. [Abstract]
Proceedings of the American Society of Clinical Oncology 10: A-1049, 300, 1991.
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2004年7月最新版(2003年9月29日更新) 翻訳:秋葉 直志
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