2006年3月最新版(2006年4月更新) この情報は主に医師やほかの医療従事者用です。
参考:非小細胞肺癌治療、肺癌の予防、肺癌の拾い上げ(スクリーニング)に対する別の要約がPDQ(Physican Data Query:医師情報質問)にあります。 米国、2006年における肺癌(非小細胞と小細胞の合計)の推定新患者および死亡数は(1) 新患者 174,470人、死亡数 162,460人。 治療を行わないと、小細胞肺癌(small cell carcinoma of the lung)は診断後の中間生存期間がわずか2か月から4か月と、肺癌のなかで最も厳しい臨床経過を示します。小細胞肺癌は肺癌の他の細胞型に比較して、診断されるまでに広範に播種する強い傾向を持っていますが、化学療法と放射線療法に強い感受性があります。 小細胞肺癌(small cell lung
cancer)の患者さんは、遠隔転移し易いので、外科的切除や放射線療法などの局所的療法では、通常は長期生存できません(2)。しかし、現在の化学療法薬剤が治療計画に加わることにより、無治療患者さんに比較して中間生存期間が少なくともの4倍から5倍に延長されます。さらに、患者さんの約10%は、療法開始からよく再発の起きる時期である2年以上も癌の再発をしません。しかし、これらの患者さんでさえ肺癌(小細胞でも非小細胞肺癌でも)のため亡くなる危険は高いです(3)。5年生存率は5%から10%です(3-5)。 限局期疾患―小細胞癌 診断時に、小細胞癌(small cell carcinoma)患者さんの約30%の癌は、原発した片肺、縦隔、鎖骨上窩リンパ節に限局しています。これらの患者さんは、限局期疾患と呼ばれて、再発のない2年生存者のほとんどはこの集団からでます。限局期疾患では、現在の治療で16か月から24か月の中間生存期間が見込まれます(6-8)。限局期疾患の一部の患者さんは化学療法を追加するか化学療法なしの外科療法で、恩恵をこうむるかもしれません。これらの患者さんはいっそうよい予後を示します。 鎖骨上窩リンパ節を越えて広がった肺癌を持つ患者さんは、進展期疾患を持つと称され、限局期疾患患者さんより予後は不良です。現在の療法によって6か月から12か月の中間生存期間が報告されており、長期無再発生存はまれです。 長期生存を着実に予測する治療前予後因子には、よい全身状態(performance status)、女性、限局期疾患があります(4,9,10)。診断時に中枢神経系か肝臓に転移がある方は有意に予後不良です(4,9-11) 。一般に、寝床から動けない患者さんは、強力な治療に耐えられず、合併症が多く、無病生存を2年以上持続することはまれです。しかし、全身状態(performance status)の不良な患者さんは、治療によって、重要な症状緩和の利益と生存期間の延長をしばしば得ることができます。 この10年から15年以上の間に診断と療法は著しく進歩しましたが、病期にかかわらず小細胞肺癌(small cell lung cancer)患者さんの現在の予後は満足のいくものではありません。従って、この型の癌を持つすべての患者さんは、診断を受けた時点に臨床研究への参加を考慮して良いでしょう。現在進行中の臨床研究は米国癌研究所(NCI)のウェッブサイト(ホームページ)にあります。 経験豊かな肺癌病理学者による病理検体の再評価は、小細胞肺癌(small cell lung cancer)患者さんの治療開始にあたり常に重要です。小細胞肺癌の中間型亜型と、より容易に認識できるリンパ球様あるいは"燕麦"亜型は治療に同等に効果が認められます。
肺の神経内分泌癌(Neuroendocrine carcinoma)は特異な疾患の様相を表しています。小細胞肺癌(small cell lung cancer)が極端な例であり、予後は不良です。気管支カルチノイド(bronchial carcinoid)が反対の極端な例であり外科的切除後の予後は良好です(2)。これらの両極端の間に、肺の高分化型神経内分泌癌(well-differentiated neuroendocrine carcinoma)と呼ばれる頻度の少ない疾患があります(3)。それは悪性カルチノイド(malignant
carcinoid)、転移性気管支腺腫(metastasizing bronchial adenoma)、多型性カルチノイド(pleomorphic carcinoid)、非良性カルチノイド腫瘍(nonbenign carcinoid tumor)、非定型カルチノイド(atypical carcinoid)と呼ばれています。小細胞肺癌(small
cell lung cancer)と似て、これは主にタバコ喫煙者に発生しますが、あまり転移しません。いくつかの研究では5年生存率は50%より多く、I期患者さんの多くは外科的に治癒可能のようです。しかし、小細胞肺癌(small cell lung cancer)との病理学的鑑別診断が難しいので、慎重な診断が重要です。 病期決定は、遠隔転移のある患者さんから、胸部に限局した病気の患者さんを区別するために重要です。非外科的方法によって癌の病期を決定することで、予後の予測を確実にし、治療に対する効果を評価できる癌の部位を見つけます。また、治療選択は病期に通常影響されます、特に限局期疾患を持った患者さんに対する化学療法に、胸部放射線療法や外科的切除を追加する時に行われます。病期決定は一般的に以下の遠隔転移検査があります、つまり、骨髄検査、脳のCT(computed tomographic)検査かMRI(magnetic resonance imaging scan)検査、胸部と腹部のCT検査、骨シンチ検査です。 多くの患者さんで診断時に潜在的または明白な転移性病変が存在するので、局所や所属リンパ節の腫瘍量の小さな違いで通常生存期間は影響されません。従って、米国対癌合同委員会(AJCC :American Joint Committee on Cancer)により開発された詳細なTNM病期分類は一般的に、小細胞肺癌(small
cell lung cancer)を持つ患者さんには使用されていません。(この病期分類については、非小細胞肺癌(non-small cell lung cancer)のPDQ(Physican Data Query:医師情報質問)要約において詳細に解説されています。)小細胞肺癌(small cell lung cancer)患者さんを病期分類するのに、復員軍人援護局肺癌研究集団(Veterans Administration Lung Cancer Study Group)により開発された簡単な2段階分類が、より一般的に使われます。 限局期小細胞肺癌(small cell lung cancer)は、原発巣のある片側胸部、縦隔、鎖骨上窩リンパ節に限局した腫瘍を意味しており、「耐え得る」放射線療法範囲内にあります。この用語に関しては国際的に受け入れられた定義がなく、胸水があったり、大きな肺癌、対側鎖骨上窩リンパ節を持つ患者さんは治療集団により含まれたり、除外されたりします。 進展期小細胞肺癌は、上記の限局期疾患の定義内に含まれない程広がりすぎた肺癌を意味しています。遠隔転移(M1)を持つ患者さんは、常に進展期疾患を持っていると考えられます(1,2)。 注)この章のいくつかの引用には証拠水準がついています。PDQ(Physican Data Query:医師情報質問)編集委員会は、治療戦略の報告された結果を判断するために、公式順位分類を使用します。(詳細は、PDQ要約の証拠水準を参照してください。) 小細胞肺癌(small cell lung cancer)においては、患者さんの多くは取り得る最良の治療にもかかわらずその癌のために亡くなります。小細胞肺癌(small cell lung cancer)の生存期間改善のほとんどは、最も入手可能で、受け入れられる療法を改善することを試みた臨床研究に起因します。そのような研究へ患者さんが参加することは非常に望ましいことです。 小細胞肺癌での臨床試験で評価中の治療には、胸部放射線療法時期の研究(限局期肺癌の患者さん用)や、I期患者さんに対する外科療法の役割の評価や、現在の化学療法の様々な使用量のことや、化学療法の新しい投与計画のことや、標準薬と新薬の組み合わせた新しい科学療法のことがあります(1)。現在進行中の臨床研究はNCIのホームページにあります。 化学療法は限局期や進展期の小細胞肺癌(small cell lung cancer)患者さんに対して生存期間の延長を示しました、しかし、治癒は非常に稀です(1,2)。前向き無作為割付試験(Prospective randomized trial)においても,高容量の化学療法による定常的な生存期間の有効性を示すことができませんでした(3,4).ある化学療法研究の後ろ向き再評価(retrospective review)は,奏効率や生存期間の定常的な改善を示しませんでした(5)(評価水準:1iiA).自家(autologous)骨髄移植を用いた強力な化学療法でさえ小細胞肺癌(small cell lung cancer)患者さんの生存期間を改善することを明らかに示すことはできませんでした(6)。高容量のシスプラチン(cisplatin)、ビンクリスチン(vincristine)、ドキソルビシン(doxorubicin)、エトポシド(etoposide)の併用を、通常容量のサイクロフォスファミド(cyclophosphamide)とドキソルビシン(doxorubicin)とビンクリスチン(vincristine) / エトポシド(etoposide)とシスプラチン(cisplatin)(CAV/EP)の併用を比較した研究では、高容量にするほど奏効率は改善しますが、その代わり治療関連死亡率が増加し、無進行期間や総合生存期間の改善は認められませんでした(7)(証拠水準:1iiA)。 治療が「標準」または「臨床試験中」というPDQでの区別は、損害賠償決定のためのものではありません。
限局期小細胞肺癌(small cell lung cancer)に対する積極的な臨床試験評価分野には、新薬治療計画、現在の治療計画薬剤の投与量、原発巣の外科手術療法、新しい放射線療法計画および方法(例えば、3次元の治療計画)、胸部放射線療法時期があります(27,28)。現在進行中の臨床研究に関しては米国国立癌研究所(NCI)のウェッブサイト(ホームページ)にあります。
進展期小細胞肺癌(small cell lung cancer)での積極的な臨床評価の分野は、新薬の治療計画、高容量、別の薬の治療計画、高容量化学療法の評価を含みます。進展期疾患の長期の多施設研究分析(meta-analysis)は、強い化学療法治療による有効率またはより生存期間の改善があるという一貫している証拠は示しませんでした(44)(証拠水準:1iiA)。現在進行中の臨床研究に関しては米国国立癌研究所(NCI)のウェッブサイト(ホームページ)にあります。
シクロフォスファミド:CPA(エンドキサン) 重要:この情報は、主として医師、および他の医療従事者のためのものです。あなたがこの話題に関して質問をお持ちの場合、あなたの主治医に尋ねてください。 2006年3月最新版(2006年4月更新) 翻訳:秋葉 直志) |